今回のケースでは、不動産の名義人であるご主人が認知症で、判断能力が低下している常況ということですから、不動産などの売買に際してご主人が当事者として契約を締結することはできません。これは契約が有効に成立するためには、契約当事者に「意思能力」があることが必要とされるためです。
ですから、ご主人のように認知症等で意思能力が低下している方の場合、ご主人の代わりにそのような判断をしてくれる成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
今回のケースでは、ご主人は既に判断能力が低下して、かつ、任意後見などのご準備もされていないとのことですので、家庭裁判所に対して法定後見の申立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見人が選任された後、ご自宅の売却が可能になりますが、自宅などの居住用財産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要になります。したがって、通常の不動産売買に比べて時間と手間が余計にかかることになります。
最近では、ご本人がまだお元気なうちに任意後見契約と併せて財産管理委任契約を公正証書で作成し、将来の不安に備える方も増えています。財産管理委任契約とは、信頼できるお身内の方などに役所や銀行、郵便局などの窓口に行って、代わりにお金の出し入れや各種手続きをサポートしてもらったりするための契約です。
近年、金融機関をはじめとする各種の窓口でご本人確認などが厳格になり、このような契約を締結しないで誰かが代わりにお手伝いしようとすると、そのたびに委任状を用意したり、委任状を持って行ってもスムーズに対応してもらえなかったりと、お願いする側もされる側も非常に負担が大きくなります。ですから、財産管理委任契約書を事前に準備して、将来の不安に備えておくのはとても有効だと思います。
当協会では、任意後見契約や財産管理委任契約の作成サービスを行っております。また専門家が問題解決に向けたアドバイスも行っておりますので気になる事がありましたら、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。